これはある夏の日のこと。洗濯機から黒いワカメのような物が出た。
最初はひとつ、ふたつだった。
そんなこともあるか、と放っておいたのが間違いだった。
洗濯物はたちまち黒いワカメに覆われることとなった。
ワカメは洗濯物に貼り付き、乾くと爪でガジガジしなければ取れない。
取り損ねると少し痕のようになって服に残る。
こんなに嫌なことはなかなか無い。
どう考えても、ワカメの正体はカビだ。
カビにまみれた洗濯機でなにが洗えるというのか。
カビの付いた洗濯物は何が洗えたと言うのか。
戦争だ。
必ずワカメを根絶やしにしてやる、心の中のお婆ちゃんの墓にそう誓いました。
ワカメが出るきっかけになったのは、酸素系漂白剤を使うようになったことだった。
原因は明らかで、この漂白剤を使わなければワカメに出会うことはない。
しかし漂白剤を使わずに見なくなったとしても、ワカメが洗濯槽にこびりついていることは間違いない。
そんな洗濯で服が綺麗になっているわけがないんじゃないか。
疑いが頭から離れない。
ワカメがしたり顔でこちらを見ている気がした。
漂白剤を使えば、ワカメが剥がれるのならば、剥がし尽くしてしまえば解決するはずだと考えた。
漂白剤を入れた空の洗濯機を数分回し、停止して蓋を開ける。
ワカメがウヨウヨと浮いていた。
キッチンの排水溝に取り付けるネットを使って、ワカメを取りつくした。
一旦取り付くしても、もう一度洗濯機を回すとワカメはまた出てきた。
それも取った。
何度やっただろうか。
ワカメは見当たらなくなった。
取り尽くしたことにホッとし、洗濯機から水を排水して、気持ちを新たに洗濯を回した。
ワカメはひとつ、ふたつ出たものの、これくらいなら許せるというレベルであった。
ワカメ戦争に終止符が打たれた
かに思えた。
後日、また漂白剤を入れてタオルを洗濯した。
ワカメは出なかった。
服を洗濯した。
大量のワカメが出た。
なぜだ。
あのとき根絶やしにしたかと思ってたのに。
チクショウ。
また戦争だ。
第二次ワカメ戦争の開戦。
もう一度空回ししてネットで取り尽くした。
数日経つとまたワカメは顔を出した。
これを繰り返した。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
一年が経ち、そして悟った。
これは、自分の力では解決できない問題だ。
洗濯槽クリーナーもあらゆる種類を試した。
そのどれもがワカメを根絶やしにすることはできなかった。
完全な敗戦であった。
でも敗北したままでは終われない。
「洗濯槽クリーニング」で検索し、『くらしのマーケット』内でプロを探す。
近々で対応可能な業者に依頼した。
プロなら完全に洗濯槽を分解して、外側から洗うことができる。
最初からそうすればよかったのだ。
変にお金を惜しんだから洗濯するたびにストレスを感じたまま1年も過ごしてしまった。
勝利を確信し、膨らむ期待を抱きながら約束の日を待った。
当日、クリーニングのおじさんは洗濯機を確認するとすぐに機材を広げはじめた。
作業が始まると洗濯槽分解に使う電動ドリルのガガガガガガという音が家中に響く。
これで安心だ、と座っているとクリーニングおじさんから声をかけられた。
「あのー、すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」
嫌な予感がした。
「実はですね、ドリルが滑っちゃって洗濯槽が取り出せないんですね。」
最悪だ。話によると、石けんのカスなどがネジ部分に固着してネジが回らなくなることがあるらしい。加えて、この機種の洗濯機は元々ネジが固くなる報告の多い物らしい。
お手上げなのか。
めのまえが まっくらに なった。
「一応、ある程度周りを外して、外側から洗濯槽の側面を洗うこともできるんですが…」
「それで!!!それでお願いします!!!!」
分解できずとも細いノズルを差し込むことで、側面が洗えるらしい。しかし分解しているわけではないので、底面の方には汚れが残るとのことだった。
クリーニングが終わり、確認のため洗濯槽の裏を見てみたが、取り外していないため洗濯槽は暗く、掃除されたんだかされてないんだかよくわからない。
しかし表の部分はたしかにピカピカになっていて、掃除をされたような気はした。
クリーニングマンにお礼と代金を支払い、帰ってもらったところで早速洗濯をして試してみる。
洗濯物にワカメは付いていなかった!
ついに勝利を掴んだのだ!
もっと早くにお願いしていればよかった!
そう、思っていた。
翌日、漂白剤を使ってタオルを洗った。
出たのだ。
ワカメが。
再びワカメ地獄に落とされてしまった。
一体前世で何をしたからこんなことに悩まされているのだろうか。
藁にも縋る思いで、YouTubeで観た洗濯槽クリーニングの方法を試すことにした。
それは酸素系漂白剤で洗浄したあと、塩素系のキッチンハイターをブチ込んで洗浄するという方法で、どうやら化学のカラクリがあるようではあったが、そのへんはよくわからなかった。
結果から言おう。
これ以降ワカメは一切出なくなった。
考えるに、洗濯槽クリーニングで汚れは8割方落とせていたものの底面の汚れが残っていたため、それがワカメとして出現していたが、最後のクリーナー&ハイターで目視レベルでは全滅できたのだ。
今はもうワカメのない生活を送っている。
完全にワカメに勝利した。
もう怖いものはなにもない。
ワカメと戦う武器を手に入れたのだから。
以降、ワカメを再び生まないための対策を日々行いながら、晴れやかな洗濯ライフを送っている。
【ワカメ戦争、完】
これを読んでくれた方はぜひ、洗濯機に酸素系漂白剤(オキシクリーンなど)を入れてみてほしい。
普通に使っている洗濯機ならワカメは必ずいます。
そして大量のワカメが出てきたら業者を呼んで解体してもらうのが1番早くて確実です。
なお、酸素系漂白剤は40℃程度のぬるま湯で効果が高まるため、バケツにお湯を汲むか風呂の残り湯などを利用することをオススメします。
〈参考資料〉
オキシクリーン(過炭酸ナトリウム)で洗濯槽の掃除をした後のカビの海にキッチンブリーチを投入した驚きの結果!!
https://youtu.be/ESTM2nx_bJM
このチャンネルでは実際にクリーナーを各社試して、比較検証していて非常に参考になる。
結論としては、分解なしで洗濯機を綺麗にするのはほぼ不可能なことがわかる。
※酸素系漂白剤は弱アルカリ性になるので、塩素系と混ぜても問題はないはずだけど、混ぜて使ったりはしないでください。
洗濯機のカビ取りより、そもそもカビが繁殖しないように乾燥させる
https://tamatora.36nyan.com/?p=2871
こちらがワカメを生まないための対策